「やだ.....そんなに見つめないでください.....」
「...誘ったのは、君だろう?」
「もう...。 意地悪.....」
時は、1週間前に遡る。
「はぁ...。 いよいよ今度の金曜日、だわ...」
「結果は出ているのだろう? 君の実力なら、問題なかろう」
「もう! 私だって緊張くらいするんですよ。 いくら単位は足りてるからって、
発表で失敗したら...」
「あぁ、済まんな。 だが、ここまで来たらあとはするべきことをするだけだろう。
人にもよるが...極限まで自分を追い込んでみたり、開き直ってみたり、終わったら
欲しくても迷っていたものを買うことにするなり、いろいろとやりようはあるな」
「なら.....卒業決まったら、ひとつ、おねだりしてもいいですか?」
「ん? 何だ?」
「あの.....基本的に、土・日はお休み、でしたよね?」
「あ、あぁ...。 そうだが...」
「来週、特に外せない用事とか、あります?」
「...いや。 特に無いな。 必要なら...昼過ぎにはこちらに来られるだろう」
「なら.....」
ユイは、一度、口をつぐんだ。
とん、と一歩前へ出て。
一瞬。
きゅ、と手を握り締める。
ふわりと、振り返って。
「来週は.....私のお部屋に、泊まって下さい.....」
答えはない。 驚いたように。
「駄目、ですか...?」
「い、いや.....構わんが..........。 ...いいのか?」
にっこりと微笑んで、腕を絡める。
「よかった...。 これで来週、頑張れそう...」
そして。
この日の昼下がり。
ユイは、初めて見る姿で待っていた。
化粧気のない顔。
ストッキングなしの素足。
以前、「その方がいい」と漏らして以来、これは変わらない。
しかし。
いつもは、スカートこそ短めなものの、ややルーズフィットの服が多い。
でも、この日は。
薄い、ノースリーブの開襟シャツ。
大きく開いた袖口。
大胆に切れ込んだ胸元。
ふたつの果実が覗き。
くっきりと谷間を晒す。
うっすらと透ける、朱鷺色の、頂。
「今日はもう、出かけないから」
そう言って、鍵を閉め。 チェーンもかける。
目の前で。
際どく短い、ややタイトなスカート。 その下の一枚を。 脱ぎ捨てた。
全てが、白。 ただ、一色。
艶やかな肌を朱に染めて。 ユイは、晴れやかに微笑んだ。
乱れた、真新しいシーツ。 純白の。 そこに。 できたばかりの、紅の染み。
「おかしいですか?」
「.....君は、モテるからな...。 とうに、済ませていると思っていたが...」
「まぁ! 私、興味本意だけでこんなことする女じゃありません!」
拗ねた顔も、また、可愛い。
.....初めて同志か.....。
苦笑を、噛み殺し。
「済まんな。 ..........私で、良かったのか?」
「あなた、だから.....」
「そうか...」
ごそごそと、ベッドサイドに転がった荷物を探る。
目的のものを、見つけだし。
「ならば、これを...受け取ってくれるか?」
「まぁ..........。 あなたが、填めてくれる?」
そっと、左手を、差し出す。
「後悔、しないか?」
「するわけ、ないわ...」
白魚のような、左手。
その薬指で。
アクアマリンが、輝いた。
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