ほのかな光と暖かなざわめきが、迷宮の闇の中にいつまでも遊んでいる。
魔神の降臨を祝う、迷宮の大祭。住人たちもこの連夜には身を装い、微笑みを交わし、迷宮はその楽園としての容貌を輝かせる。
そしてここ、日頃は淫美な争いに明け暮れるヴァイアランスの魔神殿も、祭りの夜には一時の平穏を享受していた。中庭の木陰では日頃敵対する戦士達がグラスを片手に唇を重ね、給仕達はどちらと隔てることもなく料理の盆を運んでいる。
そんな様子を見つつ…ケイオスドワーフ・ザナタックは、トコトコと中庭の煉瓦道を歩んでいた。
文化としては興味深いが、ザナタックにはなんとも理解しがたい光景である。敵対勢力であるはずなのに、なぜにイベントの最中だけ馴れあっていられるのか…
それでもまあ、観察としては面白い。花壇の側を曲がり、大きな樹の木陰にジェナとその交配相手の姿を見い出したザナタックは、好奇心のままにそちらへ近づいていった。
「ほにゃ、ジェナと…ルキナの所のビーストマン達ではないか。何をしているのだ?」
無言で杯を交わしていたジェナとヴィランデルは、騒がしい乱入者にきょとんとした目を向けた。
「あ、え、えっと…ザナタックさん…でしたっけ? こんばんわ…」
脇で酌をしていたパスナパが、愛らしい仕草で居ずまいを正した。
「こんな時くらいしか…機会がない」
大祭の習慣で悪魔風の異装をしているジェナが、相変わらずの無口ぶりで答えた。頬が紅潮しているのは、酔っているのか、気恥ずかしいのか。
「ふむむ…?」
奇妙な酒宴であった。しゃべるでもなく、笑うでもなく、拳雄と獣王は祭りの空を眺めている。そしてパスナパだけが、二人の間に挟まって落ち着かなさげに酌をしていた。これが何の意味を持つのか、ザナタックにはますますもって理解しがたい。
「一体ぜんたい何をしているのだ? 会話もなく、戦うでもなく、交尾するでもなく…理解できないのだ」
「分からないか」
杯…よく見れば、そこには酒ではなくミルクが入っている…を呑み干して、ヴィランデルは愉快そうに笑った。
「分からないのだ。ビーストマンの文化習慣か?」
「子は……不思議なものだ」
ザナタックの問いには答えず、ヴィランデルは臨月を迎えた自分の下腹を愛おしそうに撫でた。
「例え敵同士であっても、肌が重なれば、血の絆が生まれれば、こうして共に時を過ごしたくなる。もしかすると、これこそヴァイアランス様のお力なのかも知れんな」
その言葉に静かに肯いて、ジェナは唇に微笑みをたたえた。
「はい、姉様! どうぞ」
ジェナとヴィランデルの視線があった所へ、頬を膨らませたパスナパが割って入った。二人を少しでも引き離そうというのか、ぐいぐいと膝を押し込んで姉の杯にミルクを注ぐ。
ザナタックには、もちろんその辺の感情の機微は分からない。
「んんんん? 子供? 遺伝子の保存がそんなに多大な効果を生むのか?」
「はっは。子供はいい…ということだ。お前とて、あのギルメイレンとかいう戦士を作ったのだろう?
可愛くはないのか?」
妹を優しく抱きよせ、自分の腹に手を当てさせながら、ヴィランデルは微笑んだ。
「おにゃ! そーゆえばすっかり忘れていたのだ!」
ギルメイレンの名を聞いたザナタックは、ぴょこんとその場で飛び跳ねると、慌てて煉瓦道を駆け出した。残された三人は、現れたときと同じ唐突さで駆け去っていくケイオスドワーフをぽかんと見つめている。
「忘れてたのだ…この機に乗じてスパイスパイ、諜報活動なのだ!」
小声でつぶやきながら、ザナタックは帽子の透明化マシンを作動させ、ルキナ勢の神殿の中へ忍び込んでいった。
***
くうくうと、安らかな寝息。
そしてそれに似合わぬ強烈なアルコールの匂い。
「くちゃいのだ…」
帽子から出た鼻つまみアームで可愛い鼻をつまんだまま、ザナタックは夜闇をかきわける。
ここは神殿の片翼に位置する、戦士達の私室の一つである。
「これなのだな」
ザナタックはシーツにくるまった寝息の元を発見すると、慎重にシーツをはがした。
現れたのは、艶やかな漆黒の肌。豊かな体の稜線と、ベッドで乱れた薄色のブロンド。
ルキナ勢の戦士キスティオであった。
キスティオとギルメイレンの決戦をヴァイアランス神が告げてから、すでに久しい。
戦いの時は迫っていた。迷宮全体が大祭で浮かれる中、ザナタックは狡猾にも、対戦相手キスティオの偵察に来たわけである。
「ふうむ…ごくり、なのだ…」
キスティオの肉体を目の前にして、思わず唾を呑み込んでしまうザナタック。ギルメイレンがこれを相手にできるのかと思うと、少々うらやましくなる。
「偵察…偵察なのだ」
つぶやきつつ、ザナタックはキスティオの胸に手を伸ばした。自重で丸くつぶれた巨乳は、ふにふにと指を押し返して心地好い。
「はむ…」
漆黒の肌の中で夜目にも目立つピンク色の乳首を、口に含んでみた。
泥酔しているキスティオは目を覚ます様子もない。
ザナタックは悪戯っぽい笑みを浮かべると、いそいそとレザーの下着を脱いだ。きれいに並んだ腹筋の下では、小柄な体に似合わない隆々と勃起したぺニスが首をもたげている。
「ここは一つ、敵生体の生理機能を詳しく検査しておくのだ。むふふふふ…」
ベッドの上にあがり込んで、ほどよく筋肉のついたキスティオの太股を押し広げた。
「むにゅ…犬、犬〜」
「!?」
いきなりキスティオの怪力で抱き締められて、ザナタックは目を白黒させた。
「わんこ…ぐー…」
「く…だ、脱出…」
しかしそこはザナタックも強靭なケイオスドワーフ、なんとかキスティオのベアハッグをこじ開けた。キスティオは何の夢を見ているのか、にこにことした寝顔を見せている。
「ふふふ、無意識のうちに反撃するとはさすがなのだな。しかし、もうコアはさらけ出されているのだ!
検査開始! 」
ザナタックは帽子をかぶり直すと、キスティオの股間に頭を埋めて、ふくよかに折り重なった秘唇へ舌を差し入れた。熱い体温が舌先を包んで、トロリと、早くもなめらかな液体が舌を伝ってくる。
「高感度にゃのやな…」
舌を突き出したまま感想を述べて、ザナタックはやや上方にある硬い肉粒を舐め上げた。
キスティオの体がかすかに震えて、あふれる愛液の流れが幾筋にも増した。
それを指で延ばして弄び、舌ですする。滑らかな愛液は、かすかにアルコールの香りがした。
「ふむ…これだけ濡れるのなら、ギルメイレンも直接攻撃が容易に可能なのだな。しかし問題は、コア内部の防衛力なのだ。検査検査…」
闇の中でもドワーフは目が利く。挿入すべき場所をしっかりと捉えたまま、ザナタックは自分のぺニスを握り締めた。
「挿入……は…ふにゅ…こ、これは…」
「ん…んん……」
キスティオがうめき声を上げて、ザナタックは半ばほど押し入った所で腰を止めた。
半分入っているだけで、もの凄い快感である。膣壁はうごめいてザナタックの幹を刺激し、入り口はリズミカルに収縮しながらぺニスを呑み込もうとしていた。
「こ…これは予想以上なのだ…はくっ…」
「んー…」
キスティオの寝息が再び落ち着いたのを確かめると、ザナタックは堪えきれずに腰を突きいれた。豊かな漆黒の腰と引きしまった褐色の腰が密着し、根元まで挿入した充足感にザナタックは思わずのけぞってしまう。
「は、はふっ…無意識でこの防衛力とは…マズイのだ…くう、我輩も……」
夢中で数分間腰を前後したザナタックは、寝台の上で幼い声を洩らしながら、射精を始めた。
こうなると検査どころではない。祭りに馴染めないで結果的に禁欲気味だったザナタックは、キスティオの細い腰をつかんで力強く貫き、快楽を貪ってしまった。
「んむにゅ…あれ…だれ……?」
「!」
3度目の射精の余韻に浸っていたザナタックは、キスティオが目を覚ましたことに気付くと、慌てて透明化装置を作動させた。
「ほえ…あれれ? アタシ、おもらししちゃった…あれ、おまんこっておもらしするっけ…?」
ザナタックの濃厚な精液と、豊潤な愛液のミックスを流しつづける自分の秘所を、キスティオは寝ぼけながら眺めた。
「んんん…ひっく。でも、おもらししたってバレたら、ギルディアに怒られるよお。お風呂…はいろ…」
キスティオは体液をこぼさないように股を押さえたまま、フラフラと部屋から出ていってしまった。
残されたザナタックは透明ながらも神妙な表情を浮かべている。
「むむむ…これはマズイのだ! 至急対策を講ずる必要アリなのだ!」
そして窓から飛び出すと、自分の研究室のある陣幕めがけ、短い足を必死に動かして疾走していった。