カナディアは、不満だった。
それは至極簡単な理由だ。
奴隷であるシャルリアンが聖戦に選ばれ、主人である自分の名が、神託に含まれていなかった。ただ、それだけ。
しかしただそれだけのことが、堪らなく、不満だった。
轟音が水音を押しつぶす。
薬夾が次々と水面に沈み、地底河の凄まじい勢いに飲まれ、視界から消えていった。
「……畜生」
ここは、ヴァイアランス神殿が存在する階層でも最も外れ、次幻樹から流れる地下水脈が露わになった洞窟の近くである。
腕のマシンガンをひとしきり撃ったカナディアは、しかし当然そんなことで気が晴れるはずもなく、眉をしかめたまま岩に腰掛けた。
やはり事態がおかしくなったのは、ザラが、そしてその部下でありシャルリアンの妹であるシャルレーナが、迷宮に現れてからだ。
それまでのシャルリアンは、どこまでも使い心地のいい肉奴隷だった。
歯を食いしばり、たまに悪口を吐きながらも、突き入れられたペニスには必ず最高の奉仕で応えた。
カナディアはシャルリアンの尻を叩き、言葉で責め立てながら、毎晩のようにその子宮へ精液をぶちまけた。いや、毎晩では済まない。欲情すれば、自分が食事中でも、シャルリアンが排泄中でも、構わずペニスをぶち込んだ。そしてペニスに思い切りバイブレーションをかけ、腰が空になるまでイキまくったのだ。
そう…なんだかんだと言っても、カナディアはシャルリアンをこの上なく気に入っていたのだ。
それが、おかしくなった。
シャルレーナに出会ったシャルリアンは、反抗的な態度も雑言もなく、従順にカナディアに奉仕をするようになった。
カナディア相手だけではない。気が狂ったのかと思うほど、暇さえあればとにかく、戦士達のペニスを求めた。四六時中ペニスを搾り、そうでない時は股間から精液を泡立たせながら、剣舞の鍛錬をしている。後は、睡眠や食事といった最低限必要なことだけ。もしあれで睡眠や食事が必要でない魔族だったら、きっと二十四時間まぐわいながら、訓練をしていただろう。
そしてシャルリアンは、聖戦の戦士として選ばれた。
これは、焦りなのかも知れない。
不満ではない。自分の支配からシャルリアンが抜け出てしまうのではないかと思う、焦りだ。
「クソっ…シャルの奴を手放してたまるか…」
シャルリアンの肉体を思いだし、それを抱くべく神殿の方に歩みだしたカナディアは…
爆発的な衝撃を背中に受けて、岩に叩きつけられた。
***
衝撃は、容赦なく4回続いて撃ち込まれ、終わった。
背中が焼けるように熱い。爆薬か。
組織を再生すべく混沌のエンジンを起動させ、カナディアは起きあがろうとした。
その脇腹に、ウォーハンマーの如き蹴りが、一撃見舞われた。
イヤな音を立てて金属の肋が折れる。呼吸を妨げられたカナディアは、体を半転させて……目を見開いた。
「……シャルレーナ……」
シャルレーナは無言で、カナディアの喉と、鳩尾と、股間を蹴りつけた。
さらに悶絶するカナディアのこめかみにヒールを突き刺したまま、つぶやく。
「ずいぶん不用心ね。自分が殺されるほどの恨みをたくさん買ってること、忘れてたの?」
「…さ…あな。何のようだ、小娘。オレのモノが恋しくなったのか?」
シャルレーナは愛らしい顔を悪鬼の形相に変えると、手にした銃の弾倉が空になるまで、カナディアを撃った。
***
次に気付いた時は、薄暗い小部屋にぶら下がっていた。
目に入るのは、いくつもの配線と、電子機器。乱雑に置かれた工具類……そしてシャルレーナと……
「注文通り、改造しておいたのだ。うむ…少し、手を加えすぎてしまったかもなのだな。まあ、かなり知的興味を惹いたものであるから…」
「構わないわよ。ありがとう」
「うむ」
大きな帽子をかぶった小さな影は、鉄の扉を開けると、トコトコと部屋から出ていった。
「…捕まえて…強姦か? かまわねえぜ。せいぜい…オレのプッシーを楽しませてくれ」
ダメージが回復しないカナディアは、ぐったりと拘束具に繋がれたまま、皮肉ぶった笑いを浮かべた。
シャルレーナは無言のまま、自分のペニスの先端に爪を立てていた。極薄のスーツが破かれ、紅色の亀頭が露わにされる。
「一応、説明だけしておくわ」
大きく股を開かされたカナディアの前に立ち、かつてカナディアが犯した時には無かった器官……巨大なペニスを握りしめたまま、シャルレーナは言った。
「お前の性器は改造されて、特定の人物……私のペニスをキーとして、変形するようになっている」
「…!?」
シャルレーナのペニスが、カナディアの陰唇に押しつけられた。途端……カナディアの胎内で、激しい動きが生じた。
「なっ…ん…?」
今まで感じたことのない感覚と、自分で制御できない機能に戸惑いながら、カナディアはシャルレーナを見返した。
「今のお前の性器は、十にも満たない幼女のものと同じサイズになっているわ。もちろん、処女膜も再生している。その代わり感度は数倍してあるから……せいぜい、楽しむことね」
「何だとっ…ま、待…」
「黙れ!」
シャルレーナの拳が頬を打つと同時に…熱い杭が、股間を引き裂いた。
カナディアは、生まれて初めて、泣き叫びながら絶叫した。

肉を引き裂かれる痛みが、嘔吐にも似ながら、胃の腑からこみ上げてくる。
一突きごとに、粘膜は切れ、子宮は突き揺らされて、耐え難い苦悶が下半身を襲う。
シャルレーナのペニスが、ねじ込まれた。膣は無理矢理引き伸ばされて、幼い子宮口が出血しながらこじ開けられた。
「……っ……ぎ…ぎゃあああああっ!!!!」
カナディアは雷に撃たれたようにのけ反ると、シャルレーナから逃れようと、無駄なもがきを見せた。
痛みが問題なのではない。痛みだけなら、シャルリアンに切り刻まれた時の方が酷い。
問題は……
問題は、その地獄の苦しみが、このうえない快感で塗りつぶされていくことなのだ。
「や…やめぅ…やめ、やめてくれえええっ! 頼む…し、死っ…」
「そうよ…そうなるのよ。苦しくて、辛くて、痛くて……でもね、そんなことよりも、自分が壊れるくらい気持ちいいのが、一番怖いのよ!!」
シャルレーナは憎悪で顔を歪めたまま、次々と涙を溢れさせていた。
だがそれも、カナディアの視界では霞んでいく。
凄まじい痛みと快感の怒濤が、カナディアの回路を焼いていった。ペニスは完全に壊れたように、だらしなく精液を漏らし続けている。どこの機能が狂ったのか、射精しているというのに勃起すらしていない。
涎と涙と精液をまき散らしながら、カナディアは悶え狂い続けた。時折胎内に生じる熱さが、シャルレーナの射精だとも理解できないほどに。
「う…ぐうっ……き、汚らしいまんこのくせに、締め付けだけは……いいわね……」
カナディアの意識が少しでも戻ったのは、シャルレーナが幾度目とも知れぬ絶頂を終え、大きく息を吐き出した時だった。
「…ぁ……めて…やめて……許して……」
カナディアはうわごとのように、つぶやき続けている。悪辣なサイバーミュータントの表情はもうなく、まさに凌辱され破壊された幼女のような表情だ。
「許すわけないでしょ」
「ひっ!!」
豊かな胸を握りつぶさんばかりの握力でつかまれ、カナディアは震えた。
「殺してやりたいとずっと思ってたけど、やめたわ」
血と、精液と、ありったけの体液を混ぜ合わせたものを糸引かせながら、シャルレーナはカナディアからペニスを引き抜いた。
「私を無理矢理犯したことを、一生忘れられないようにしてあげる。私の肉便器になることでね」
「…っ……」
カナディアは戦慄しながら、顔を伏せた。
これまでか。
覚悟はしていた。後は、この身を改造され続け、シャルレーナになぶられる肉人形として生きるのか……
だが、シャルレーナは不気味に微笑むと、カナディアにまた銃口を向けた。
「とりあえず、ルキナさんの所には帰してあげる。じゃあね」
小さな針が乳房に突き刺さり……カナディアは、昏倒した。
***
無人の鉄の部屋。ザラ様に懇願し、ザナタックに協力を請い、特別に作った部屋で、シャルレーナは一人たたずんでいた。
カナディアを凌辱してから、半日近く経つ。
もうアイツは神殿に帰って、自分が解放されたことをいぶかしんでいることだろう。
「バーカ」
シャルレーナはクスクスと笑うと、部屋の隅にあった布を取り払った。
そこにあるのは……カナディアの体の一部を精巧に模した機械……肉と金属で作られた、美しい腰と尻のトルソーだった。
トルソーを壁に立てかけ、ちょうど後背位で突き出された尻のような姿勢にする。股間も肛門も十分な潤滑油で濡れていて、生身の体と同様に挿入できそうだ。
「へえ…今は、トイレか。フフ……さぞかし驚くでしょうね」
トルソの腰についたモニターに浮き出る、カナディアの生体情報を読みながら、シャルレーナは残忍な笑みを浮かべた。
「栓をしてあげる」
そして何のためらいもなく、擬カナディアの作り物の肛門を、ペニスで貫いた。
作り物の尻は、突然肛門性交を強いられたかのように震え、わななき、ペニスを排出しようとした。ニヤついたまま、シャルレーナは尻を押さえつけ、ペニスを激しく出し入れする。
「あはは、あははははっ!」
本物のカナディアの姿勢が、狭い個室で悶え、壁に爪を突き立てているのを読み取って、シャルレーナは哄笑を始めた。
そう…ザナタックに作らせたこの擬体は、受信機をインプラントしたカナディアとリンクし、シャルレーナの凌辱を本人に伝えるように作ってあるのだ。
「『本物』はもう漏らしちゃってるかもね。じゃあ次はこっちに入れてあげる。トイレで一人で処女喪失、楽しみなさい!」
シャルレーナは憑かれたように叫ぶと、幼く作られた擬体の性器に、極太のペニスを挿入し直した。肉をこじ開ける感覚と、シャルレーナをキーに「再生」された処女膜を突き破る感覚が、エルフのペニスを楽しませる。
「こうやって、毎日好きな時に射精してあげれば、そのうち妊娠しちゃうわね……あははははっ!!」
カナディアの狂乱を機械ごしに感じ取りながら、シャルレーナは機械の子宮にたっぷりと射精した。その精液だけは、ザナタックの異次元装置で濾過され、カナディアの胎内に直接転送されていく。
「待っててね、姉さん。コイツで鍛えたペニスで、死ぬまで犯してあげるから……」
怨敵の肉に射精を繰り返しながら、シャルレーナは姉の体を夢想して……愛らしく微笑んだ。
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