謎の霧に覆われたラネーシア神殿。
迷宮全体が混乱に陥る中、その霧の中を進む三つの影があった。
まずは、霧の中を歩くこの三人の物語から、語り始めようではないか…
水路の岸。桃色の霧に阻まれ、美しい声音が消えていく中、人影が佇んでいる。
その身は逞しく引き締まり、動きに寸分の隙もなく…
ただ、今はその美貌も苛立ちを見せ、妙に荒い息が、霧の中に吐き出されていた。
「……!? 畜生、どうなってるんだ、この霧は!?
あのじじいの話じゃ、この先の神殿に大勢のふたなりがいて……可愛がってくれるって……
く…ダメだ、我慢できねえ…
だ、誰も見てねえよな…?」
その人影…ザイナは、しばし辺りを見回すと、レオタードの脇からペニスを引き出し、擦り立て始めた。
謎の老人の誘いを受け、混沌の海を渡ったその身は、両性具有化している。
魔導武術で鍛えたはずのザイナの精神力を以てしても、わき上がってくる欲望を押さえることができないのだ。
「く…で、出る…な、なんで…こんな汁が出るだけで、こんなに気持ち良いんだ…畜生…
う…く、う、うああああっ!!」
日焼けした体を激しく痙攣させ、ザイナは白濁した精液を水路に撒き散らした。
だが…まだ、霧が晴れる様子はない。
「…ブランジェぇ…どこ行っちゃたんだよぉ…怖いよぉ…ひっく…ひっく…」
「っ!? そこにいるヤツ、何者だ!?」
自慰の余韻に浸って目を潤ませていたザイナは、その身を翻して石筍の上に飛び上がった。
暗がりに目をこらす。格闘家の本能が、影のいる場所を教える。
「うひゃああ! で、出たぁ! わああごめんなさいボクなんか食べてもおいしくないですたすけて!!」
「て、てめえずっとそこに…ま、まさか……オレが…その…す、するの、見てたのか!?」
「み、見てません! ただ、その、ちんちんをいじってるトコを少し見ただけで…」
「見てるじゃねえかあっ!!
ぶ、ぶっ殺す!!」
顔を真っ赤にしたザイナが、少女めがけて飛びかかる! だが、その時…
水路に高く水しぶきが上がり、銀の刃と鉄拳がぶつかり合った。
ザイナの一撃を受け流した影は、水面を蹴って少女の前に立つ。
「ブランジェ!!」
「大丈夫かコロン!? くそっ…お前もあいつらの仲間だな!? コロンに、何をするつもりだっ!?」
ブランジェと呼ばれたその人魚は、曲刀の切っ先を向けたままザイナを睨み付けた。
「あいつら…? 違う、オレは、こいつがその、覗きをやらかしてたから……」
「嘘つけ! そ、そんなにナニを大きくして……コロンを襲おうとしていたんだろ!」
「こ、これは…さっきまで…」
「問答無用!」
ブランジェは態勢を低く取り、ザイナ目がけて駆け出した。
だが、アースト=セギーユの達人であるザイナにとっては、あまりに稚拙な攻撃だ。
「へっ、オレとやろうってのか、面白ぇ!
我が一撃は…
「ま、待て…ああああっ! ひ、卑怯…だ、ぞ! や、やめっ…は、ぐううっ! ひっ! で、出る、またっ! うあああああっ!!」
灼けるような快感が下半身で膨れ上がる。ザイナは涙を溢れさせながら、ブランジェの掌に射精を繰り返した。
「……随分と敏感なんだな。コロンでもこのくらいじゃイかないのに…」
ザイナの狭い肛門に指を出し入れしながら、ブランジェが呆れたように見下ろす。
まともな戦いな負けるハズなどないのに…
いきなりこんな戦いに持ち込まれては、発情が止まらないザイナに勝ち目はなかった。
「でもどうやら、あいつらの仲間じゃないみたいだな。こんなに弱いわけがない」
「あ、あいつらって、何なんだ!? あ! そ、それより…手ェ放せ! う、くっ……」
「じゃあ…はあ…はあっ…この先に、何かいるって言うのか…」
「そうだ。私達もルキナ様にお仕えするため、ここまで来たというのに…この霧と、そこから聞こえる声に阻まれているんだ」
「だから…ボク、やだって言ったのに…」
「なるほどな…何か、か…」
あの後ご丁寧に二回も出させられたザイナは、ようやく体の火照りも醒め、武人の目つきで辺りを見回していた。
「だからって、ここでボーっとしてるわけにも行かないだろう。何とかして、霧を越える方法を…」
「!! 見て、あれ! 霧が…!!」
濃密な霧が薄れ始めていた。
水路の激流も急速に収まり、十分歩けそうな岸が浮かび上がる。遙か彼方に見える光点は…神殿の灯りか。
「これは…どうする?」
「行くしかねえだろ。安心しな、オレはセギーユ貴士だ、何が出ようが…」
「ほ、ホントに行くの? こわいよおぉ…」
3人は身を寄せ合いながら、水路を歩いていく。
そして……朧ろげな灯火の舞う神殿の中庭に、足を踏み入れた。