by 神宮寺
「青葉君?」
四者四様の表情を浮かべている彼らに、冬月が不安げに尋ねる。
「...わ、私ごときが司令の考える事など」
しばしの間をおいて、しどろもどろで、青葉は答えた。彼は自分の想像のインパクト
で、それどころではなかった。
「では、葛城君」
「それが、目的を達成するのに一番効率がよいからでしょうか?」
ここらへんは、一応、大人ということで(^^;。
「なるほど、赤木君はどう思うかね?」
『私はレイに言うの。「お義母さんって、呼んでくれる?」すると、レイならこう答
えるわ。「命令なら、そう呼びます」私は苦笑いして頷くの。それで、シンジ君が
私に言うのね。「リツコさん...急にお義母さんができたって言われても...」
そうね....シンジ君ならそうよね......』
どうやら、さっきの妄想から抜け出していない様である(^^;。
「赤木君.....?」
『でも、いつか、シンジ君もついに私に心を開いてくれるのよ.....
そして、こう言うのよ...「お義母さんって....呼んでもいいですか?」
恥ずかしそうに、上目使いで私を見上げながら...あぁ、母性本能くすぐら
れるわ....抱きしめてあげたい....』
「あの....赤木君?」
冬月は、困惑し、他の3人を見回す。3人は引きつった笑いのまま、静かに首を振る。
そして、冬月は老いた顔に不安げな表情を浮かべると、再び、リツコに問いかけた。
『どう、思うかね?葛城君』
ドンッ!ガラガラガッシャン!!
盛大にひっくり返ったのは、青葉とミサトである。
「あの、今度は名前、間違ってませんから....」と、小声でマヤ。
......冬月、二回も同じボケをするんじゃない(^^;。
でもまぁ、今回のボケは意味があった。リツコは、ミサト達が立てた騒音に我に
返り、周囲を見渡すと、テーブルについていた全員がジト目でにらんでいた。
......そりゃ、そーだ(笑)。
そして、感情を意思の力で押し込めると、しれっとした表情で冬月の問に答えた。
「競争相手のプランを叩き潰す事により、一石二鳥の効果を狙っているのでは?」
......頬を一筋の汗が流れるのは、御愛嬌であろう(^^;。
リツコの振る舞いに対し、全員の表情は、しらけきっていたが、皆の思いは一つ
だった。『取り敢えず....今のはナシ!ということで』
勿論、そういう問題ではなかったのだが、収拾策はそれ以外なかった(^^;。
「コホンッ」再び、咳払いを一つ。「敵も増えると思うが....」
この人も結構大変の様な気がする(^^;。
......どうでもいいが、話の腰、折れ過ぎ(^^;。
「増えてもいいような敵しか作らないでしょう。碇司令は」
ため息に近いものを漏らし、最後の一人に向きなおす。
「それでは、伊吹君?」
「....案外、そういう方法が好きだったりして.....てへっ」
「......マヤ」
「...あっちゃ〜」
「...マヤちゃん」
時計の秒針が2まわり程する間、誰も指一本動かそうとしなかった。
「........伊吹君」
冬月の声は、地の底から響くようだった。
「は、はい」
「何故、わかった」
「.........えっ?」
「................えっ?」×3
(30秒ほどお待ちくださいm(_ _)m)
「.........................えぇぇ!」×4
(今度は1分ほどお待ちくださいm(_ _)m)
「.........................えぇぇぇっ!!!」×4
「冬月副司令!」一番に事態を把握したリツコが、口角泡飛ばし、冬月に迫る。
「い、い、い、碇司令が...」ここまで言うとモスコミュールを一息で呑み干す。
「ヒ、ヒック」モスコミュールは隠れたスケコマシの酒と称される様に、口当たりは
よいが、アルコール度数は高いのである。ろくに肴も食わずに一気に飲んだりしたら、
吃逆の一つもでるのも当然であろう。
「ヒック...ヒック...碇司令が...ヒック...敵が増えるような真似をするのが好きだ
と...ヒック... 聞こえた様な気がするのですが.....ヒック...ヒック...」
「そう言ったつもりだが」
冬月の言葉に迷いはなかった。
「そうですか....ヒック...」
呆然とした表情で席についた。
そんなリツコに横目に、アルコールを一番呑んでいなかった(それ故、もっとも酔って
いなかった)マヤが叫んだ。
「そ、それでは、碇司令は....息子を意味も無く苛める趣味があると?」
......そうかもしれんが、それは違うと思うぞ、マヤ(^^;。
そんなマヤに対し、冬月は罪を懺悔した咎人の様に晴れ晴れとした表情で答えた。
「そうではない。確かに必要なら幾らでも息子を苛める。
だが、あいつはその程度ですむ男じゃない。
碇は....自分が格好をつけるためなら.....
......自分が格好いいと人から思われる為には
......如何なる犠牲も惜しまないのだ」
......そ、そうだったのか(爆)。
「それじゃ....」ようやく、吃逆から復活したリツコが叫ぶ。
「零号機の最初の暴走事故は、まさか......」
「緊急事態に備えて待機していた筈のスタッフよりも早く、何故碇がレイの所へ行け
たと思うかね?」
あれだけの大規模な実験に緊急事態の対処の為にスタッフの、十や二十はいるのは
当然の事である(^^;。更に言うのなら、パイロットの人命救助は最優先の筈なのに、
ゲンドウがレイを助けるまで、誰も近寄らなかった。何故だろう?
「あの....それじゃ、第三使徒迎撃の時」青葉が恐る恐る尋ねる。
「戦自がN2地雷で攻撃しても、使徒撃退できなくて撤退した時、戦自の司令が大丈夫
かと尋ねたんです。碇司令はその問に自信満々で『そのための、ネルフです...』
って眼鏡を押し上げながら話してたんですけど...あれも...ま、まさか..」
「N2地雷は使徒にダメージを負わさなかったのかね?」
「一時的な足留めは出来ましたが...あくまで一時的です」
「一時的とはいえ、足留めが出来たんだろう。ならば、何故、その時、N2地雷を山程
撃ち込まなかったのかね?芦の湖の数が、もう2〜3個増えようが、富士五胡で海
水浴が出来る様になろうが、使徒殲滅の為なら全てOKのはずだろう?」
言われてみれば、その通りである。例えば第七使徒との戦闘では、N2地雷によって
使徒の構成元素の数十%を消滅に成功しているのである。ATフィールドも万能では
なく、死角はあるのだ。戦自に面子があるのなら、第三使徒迎撃の時に少なくとも手
持ちのN2地雷を全部叩き込む程度の真似をしてからでないと、手を上げたりはしない
はずである(^^;。なんでやろう?
「それじゃ、第三使徒迎撃の時、私がシンジ君をゲージに連れていくのに道に迷った
のも、碇司令がシンジ君に大見得を切るためだったって言うんですか?」
「いや...それは君の方向音痴が原因だよ。葛城君」
......まぁ、お約束と、言う事で(^^;。
「あの....そうだとすると.....」最後に伊吹マヤが恐る恐る尋ねる。
「第十三使徒の時の.....零号機の左腕切断の命令もそうだったんですか?」
「あの時、エヴァ3機の武器は一体なんだったかね?」
「零号機がパレットガン、初号機がプログナイフ、弐号機がバズーカです」
「それでは、武器の射程距離はどうかね?」
「バズーカ、パレットガン、プログナイフの順です」
「武器の威力は?」
「同じ順です」
「では、第拾参使徒にやられた順番は?」
「弐号機、零号機、初号機の順です」
「おかしいと思わないかね?」
エヴァ三体が連携して第拾参使徒と闘うのであれば、長距離から弐号機がバズーカ
で足留めし、そこを零号機がパレットガンで攻撃し戦闘力を奪うか、少なくとも注意
をそらした上で、初号機が近接戦闘に打って出るべきである。三体が三体とも性質の
異なる武器を持ち、連携で敵と闘う際の諸兵科連合は近代戦術の初歩である。
ところが現実は、一番射程距離が長いはずのバズーカを装備した弐号機が、第拾参使
徒に一番近距離に配置されていた。本来なら一番後方に配置されるべきなのに。
何故だろう?
更に言うのなら、最強の武器を装備した弐号機が単独でやられたにも関らず、それ
よりも威力が劣る武器を持った零号機に、単体単独で迎撃を命じている。敵よりも戦
闘力が劣る戦力の逐次投入は、孫子の兵法を紐解くまでもなく、戦術上でもっとも愚
かな行為である。何故なら、敵に各個撃破をしてくれと言うようなものであるからだ。
そして実際に各個撃破されてしまった。なんで、こんな馬鹿な真似するんじゃい?
しかも、待ち伏せを狙っていた弐号機が逆に奇襲され、敵がこちらの意図に気付い
ている事が明白だというのに、零号機に引き続き単独で待ち伏せ攻撃を命じている。
弐号機がやられた時点で、零号機に初号機との連携攻撃を命じるべきだというのに。
使徒の感染を恐れていたにしても、あまりにも愚かな戦術だ言えるだろう(^^;。
それならいっそう、3体で一度に突っ込んで相手をタコ殴りにした方がまだましだっ
ただろう。何故だーーーーー!誰か教えてくれーーーーーー!
冬月との問答は、三人にある疑問を抱かせた。そして、その疑問に耐えきれなくな
った、ミサトがヒステリックに叫んだ。
「碇司令は何で...そんな事をするんですか?
.....そんな事をやって楽しいんですか?」
「それは....俺にも.....分からない。
奴とは10年以上の腐れ縁だが.......
奴の考えている事など....俺には分からん」
冬月の口調は普段と変らなかったが、いつのまにか一人称が『俺』に変っていた。
「だが.....それでも想像する事はできる。
多分、俺の想像はそれ程外れていないと思う。
奴の本質は..俺が考えている通りだと思う」
.....かってない恐怖が、そのテーブルを支配した。
誰もが、真実を知りたかった。誰もが、真実が恐かった。
そして、真実を最も知りたかったのは赤木リツコだった。
「冬月副司令、教えて下さい」リツコの声は、今にも消えそうな程、小さかった。
「あの人の本質を.....」リツコは救いを求めるような目で冬月を見上げる。
冬月の視線とリツコの視線が交差する。
冬月は唇の端に微かに笑みを浮かべると、小さく首を縦に振った。
その姿は、金貨三十枚と引き換えに師を売り渡した男の様だった。
「碇は...そういう真似をしている時は....楽しいのだ。
碇は....そういう真似をするのが大好きなのだ....
...そういう真似こそが、人々に受けると思っているのだ。
何故なら......
碇は.......
奴は.......
自分の事を....
.............人気者だと思っている」
(そのまま、しばらくお待ちくださいm(_ _)m)
(そのまま、しばらくお待ちくださいm(_ _)m)
(そのまま、しばらくお待ちくださいm(_ _)m)
「私が目を覚ますとね....」
永遠に続くかと思われた静寂を破り、リツコが唐突に話し始める。
「日はとっくに昇っているの。私は身仕度もそこそこに台所へ駆け込むと、もう、朝
食の用意は出来ていて、私のする事なんか一つもないの...そして、シンジ君が
おはようございますって言いながら、私にご飯をよそってくれるの。レイは会釈す
るだけで、私に気付かないみたいに黙々とご飯を食べてるの....でもね知って
るのよ、私...あの娘がシンジ君の作ったくれたご飯を残した事が一度もないの
勿論、私やあの人がレイにそうしろって命令した訳じゃないのに....そして、
私がテーブルにつくと、すっごく不機嫌な顔をしたあの人が起きてくるの....
あの人ったら、私以上に朝が駄目なの。ほんと、シンジ君とレイがいなかったら、
二人ともどうなっていたことか......そして、私は、まだ髭の手入れもして
いないあの人に、熱いお茶を入れて上げるの....。この役だけはシンジ君にも
譲れないわ...だって...私は...私は...あの人の.....つ...」
......どうやら、先程の妄想の続きらしい。目が完璧に逝っている(^^;。
「ピッポッパ....加持君....お願い.....恐いの.....助けて...」
携帯を取り出すと、いきなり電話を始める人も.....
「あら、キャッチホンだわ..ピッ..あっ、シンジ君。御免ね,連絡しないで。うん、
今日、一寸遅くなるから戸締まりしっかりしてね...そう、リツコ達と飲んでるの」
......まぁ、保護者の自覚があるだけ、よしとしよう(^^;
「えっ?レイが来てる?あっ、そう言えば、明日のハーモニクステストが早いから、
一緒に車で行こうと思って呼んだんだっけ?...いいじゃない。別に....
えっ?アスカは、洞木さんの所に泊まりに行っていない?明日まで、二人っきり?
シンちゃん、チャンスよ!チャンス!.....何言ってるの!いい!決める時に
決めるのが、男の甲斐性よ!!....そう、いざと言う時は勝負は腕力だからね!!
...そう!そのいき!...それじゃ、シンジ君、頑張ってね!おやすみなさい」
......前言撤回(爆笑)。
ミサトはどうやら錯乱して自分が何を言ってるか分からないようである(^^;。
まぁ、シンジとレイじゃ、心配しても、皆が期待するような事はあるわけないか(爆)。
あったら、ほんと、赤飯ものである(笑)。
「ピッ...ゴメンなさい。ううん、大した事ないの...そんな事....お願い。
今日は独りにしないで....」
......まぁ、加持とヨリが戻ってよかったということで(爆)。
「マヤちゃん...」
「青葉君.....恐いの....お願い...嘘だと言って...」
「大丈夫だ。俺がいる。俺がいるよ。マヤちゃん」
「.....青葉君.......私を....離さないで....」
......コラコラ、どさくさにまぎれて、何をやっているのかね、君達は(^^;。
「さて、皆さん、ラストオーダーです。最後はやっぱりご飯もので決めたいと思い
ますが、お茶漬けにします?それともおにぎりに?ここの鯛茶漬けは絶品ですよ」
.....日向、君は幹事の鏡だ(^^;。